第11回 畜産品(肉・牛乳・卵)

畜産品の安全性は飼育環境と餌の質に依存し、信頼できる生産者から直接入手するのが望ましい。

肉、牛乳、卵といった畜産品は私たちの食生活に欠かせないタンパク源です。しかし、これらの食品の品質や安全性は、家畜の飼育環境や与えられる餌によって大きく左右されます。畜産品を選ぶ際に知っておきたいポイントをご紹介します。

餌と飼育方法が安全かどうか

アニマルウェルフェアの重要性

畜産品の安全性を考える上で重要なのは、家畜の健康と幸せに配慮した「アニマルウェルフェア」な飼育がされているかどうかです。広い牧場でのびのびと育てられているか、鉄パイプとコンクリートに囲まれた身動きできない環境で育てられているかの違いは大きいのです。

日本では一般流通の食品においてアニマルウェルフェアが問題になることはまだあまりありません。しかしヨーロッパではいち早く工場的な畜産システムの問題点が認識され、アニマルウェルフェアが重視されるようになっています。

暗く狭い場所に閉じ込め、運動もさせずに育てると、免疫力が低下して病気が発生するのは当然です。それを防ぐために抗生物質を投与する必要があります。ところが、これにより薬剤耐性菌が多く発生するという新たな問題が生じています。抗生物質に頼らない畜産システムとしてアニマルウェルフェアが推奨されるようになった背景には、このような課題と動物福祉の観点があります。

餌の質の問題​

良質な餌を与えているかどうかも重要な要素です。家畜の餌が農薬まみれの輸入穀物であれば、それは当然家畜の体内に蓄積されます。脂溶性の農薬は脂肪の多い霜降り肉や牛乳、卵に蓄積しやすいという特徴があります。同様に成長ホルモンや黄体ホルモンも脂肪部分に蓄積します。

畜産品と漢方医学

漢方医学では肉類は「温性」で「気血」を補う重要な食材です。特に「アニマルウェルフェア」で育てられた家畜の肉は漢方でいう「正気」が充実しており、体を温め、筋肉や血を作る効果があります。

漢方理論では、動物の「気」はその飼育環境に大きく影響を受けるという考え方があります。ストレスなく育った家畜からは良質な「気」を摂取できるとされています。反対に、不自然な環境で育てられた家畜から得られる肉や乳製品には「邪気」が混じり、体内の「気滞」(気の流れが滞った状態)を引き起こす可能性があると考えられています。

牛乳は漢方では「涼性」で体に潤いを与える食品とされますが、良質なものを選ぶことが重要です。また、卵は「平性」で「気血」を補うとされます。いずれも飼育法と餌の質が「気」の質を左右すると考えられています。

漢方では「食養生」の考え方から、体質や季節に合わせた畜産品の摂取を推奨しています。例えば、「気虚」(気力不足)の状態には良質な肉類が、「血虚」(血の不足)には卵や肝臓が適しているとされます。いずれも添加物や薬剤の影響を受けていない純粋な食品であることが前提です。

安全な畜産品は信頼できる生産者から直接入手するのが確実です。

良質な肉・牛乳・卵は、一般流通では入手がほぼ困難なのが現状です。市販品には販売時に肉の色を鮮やかにする発色剤が使われていたり、ロングライフ牛乳のようにパッケージに毒素が含まれている場合もあります。どのように育てられた家畜なのかを知ることが、安全な畜産品を手に入れる鍵です。漢方医学の観点からも、自然な環境で育った家畜からの食品は「正気」を補い、健康維持に役立つとされています。

第11回 畜産品(肉・牛乳・卵)

肉・牛乳・卵の安全性は飼育環境次第。抗生物質投与による薬剤耐性菌問題、発色剤・ロングライフ牛乳の毒素、骨抜き処理の化学薬品など。アニマルウェルフェアな畜産品の選び方を解説。

第10回 魚

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第9回 野菜

世界20億人が満腹でも栄養失調の「隠れ飢餓」状態。現代野菜の栄養価低下と硝酸塩の危険性(致死量4000mg)。5色野菜をバランスよく摂る漢方の智慧と栄養豊富な野菜の見極め方を解説。

【食養生シリーズ】第8回 豆腐

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【食養生シリーズ】第7回 小麦

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【食養生シリーズ】第6回 米

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【食養生シリーズ】第5回 食用油

n-ヘキサン抽出油のトランス脂肪酸リスクと、無農薬原料の圧搾法・コールドプレス油の違い。ポストハーベスト農薬が油に溶けやすい問題と安全な食用油の選び方を解説。

【食養生シリーズ】第4回 みりん

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【食養生シリーズ】第3回 醤油

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【食養生シリーズ】第2回 砂糖

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【食養生シリーズ】第1回 驚くべき塩の力

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