第12回 加工肉

原材料表示がシンプルで添加物を使わない良質な製品を選ぶべきです。

ハムやソーセージなどの加工肉は多くの人に愛される食品ですが、市販品の多くには知っておくべき問題があります。特に子どもが好む食品だからこそ、安全なものを選びたいものです。

大好きなものこそ安全なものを

本来、ハムは豚肉を塩や香辛料に漬け込んだシンプルな食品ですが、現在の市販品では純粋な豚肉が使われていることはむしろ珍しく、安価な肉なら何でも使われています。オーストラリアの大ネズミなどの安い獣肉や、薬品残留(キャリーオーバー)の問題がある魚肉も原料になっていることがあります。仮に豚肉を使用している場合でも、その餌や飼育法には問題があることが多いのです。

加工肉の多くは、くず肉や冷凍肉を原料としているため、ボツリヌス菌対策が必要となります。そのため、亜硝酸ナトリウムや硝酸カリウムが使用されますが、これらは肉のアミンと結合すると強い発がん性物質であるニトロソアミン化合物を生成します。これらは発色剤としても機能しますが、本質的には殺菌剤なのです。

また、新鮮な肉ではないため、様々な添加物が使われています。例えば、デンプン(遺伝子組換え問題あり)、ゼラチン(狂牛病リスクのある原料や製造時の化学薬品問題)、植物性タンパク(ポストハーベスト農薬、遺伝子組換え、添加物の残留問題)、卵白(餌や飼育の問題)などです。リン酸塩などの保水剤を使って肉を1.5~5倍に増量し、添加物を大量に投与しています。さらに、実際に燻製処理をせず、タールを含む「くん液」で香りをつけている製品も多いのです。ハムやソーセージは子どもたちに人気の食品ですが、これらは現代の食の問題を象徴しています。添加物だらけの大手メーカーの加工肉は避けた方が賢明かもしれません。

加工肉と漢方医学

漢方医学では食品の「気」は加工によって変化するとされています。添加物の多い加工肉は「熱毒」を生じやすく、体内に「湿熱」や「痰湿」を蓄積させる原因になると考えられています。これらの状態は、現代医学でいう炎症や代謝障害に似た症状を引き起こす可能性があります。

一方、良質な肉を原料に、自然な塩や香辛料だけで丁寧に作られた加工肉は「気血」を補い、特に「気虚」(気力不足)や「血虚」(血の不足)の人には適した食材となります。漢方では「薬食同源」の考え方から、日常的に摂取する食品の質を重視しており、特に子どもの成長期には添加物の少ない「正気」の充実した食品を選ぶことが推奨されています。

また、漢方医学では食物は「五味」(酸・苦・甘・辛・鹹)に分類されますが、伝統的な加工肉は「鹹」(塩味)と「辛」(香辛料)のバランスが良く取れており、「脾胃」(消化器系)を温め、「気」の巡りを促進するとされています。しかし、現代の多くの加工肉には化学的な甘味料や調味料が加えられ、このバランスが崩れていると考えられています。

漢方では季節に合わせた食べ方も重視します。冬場は体を温める食材として加工肉を適量摂ることは良いとされますが、夏場は体内に熱をこもらせないよう控えめにすることが推奨されています。いずれの季節でも、添加物の少ないシンプルな製品を選ぶことが基本です。

原材料がシンプルな加工肉を選びましょう。

このような状況の中でも、良質な加工肉を生産している生産者は存在します。良質な豚肉を原料に、発色剤、結着剤、添加物を使わず、良質な塩、砂糖、各種香辛料のみで仕上げた本物の加工肉です。最低でも原材料表示が「豚肉、塩、砂糖、香辛料」というシンプルなものを選ぶことをおすすめします。漢方医学の観点からも、自然な材料で作られた食品は体内の調和を保ち、健康維持に役立つと考えられています。

第12回 加工肉

ハム・ソーセージの多くはくず肉・冷凍肉を1.5-5倍に増量。亜硝酸ナトリウムがニトロソアミン(発がん性物質)を生成。原材料表示がシンプルな添加物不使用の安全な加工肉の選び方を解説。

第11回 畜産品(肉・牛乳・卵)

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第10回 魚

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第9回 野菜

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