第10回 魚

自分で釣るか、信頼できる漁場の旬の天然魚を選ぶことが大切です。

「魚は天然で健康的」というイメージがありますが、現代の魚事情はそれほど単純ではありません。市場に出回る魚の多くには、意外な問題が潜んでいます。安全な魚の選び方について考えてみましょう。

魚だから無添加は間違い

「魚だから天然だろう」と思うのは早計です。現代の魚は薬漬けになっていることが多く、食べると同じような味がします。老人施設で提供される魚について、お年寄りが「鯛も平目も同じ味」と言うほどです。

養殖魚は畜産と同様、餌に抗生物質などの飼料添加物が含まれています。病気予防のためにホルマリンが投与されることもあります。さらに、魚網の防汚剤として使われる有機スズ化合物TBTOの毒性も問題視されています。養殖魚は出荷前の段階ですでに汚染されているといっても過言ではありません。

販売時には様々な化学薬品が添加されます。市場では冷凍魚を解凍したものが「鮮魚」として売られていることもあります。価格が安い時に大量に仕入れておき、価格が上昇したときに放出するため、2~3年前の古い魚が平気で店頭に並ぶこともあるのです。魚は冷凍状態でも酸化しやすいため、酸化防止剤が多用されています。他にも保存性を高める薬剤や、退色を防いで色鮮やかに見せる薬剤など、冷凍魚は化学薬品なしには製造できません。

最も注意すべきは骨が抜かれた魚の切り身です。子どもが食べやすいように提供される骨抜き魚は、魚の肉をいったん薬品で固めてから骨を抜く処理が施されています。

魚と漢方医学

漢方医学の観点では、魚は重要な食材として位置づけられています。東洋医学では魚は主に「平性」から「温性」の食材とされ、良質なタンパク質を提供し「気血」を補う食べ物として重視されてきました。

特に旬の天然魚は「精」が充実しており、脳や神経系の発達に必要な栄養素を含むとされています。漢方では食材の「気」を重視しますが、天然の環境で育った魚には良質な「気」が宿り、反対に化学物質に汚染された魚は「毒邪」を持つと考えられています。

また、魚の種類によって効能が異なるとされ、白身魚は「清熱」(体内の余分な熱を冷ます)作用があり、青魚は「補血」(血を補う)効果があるとされます。このため、季節や体質に合わせた魚の選択が推奨されています。

春の時期には、ハマグリ、帆立貝、牡蠣、シジミ、にしん、さわらなどが体の調子を整えるのに適した食材とされています。漢方の「薬食同源」の考え方では、旬の魚を適切に選ぶことが、未病を防ぎ健康を維持する重要な養生法とされています。

本当に良い魚は自分で釣るか、信頼できる漁場の魚を選びましょう。

安全な魚を食べるなら、自分で釣るのが最も確実です。それが難しい場合は、世界三大漁場の一つである三陸沖の天然魚がおすすめです。ここはきれいな海水が深層から湧き上がる優良な漁場で、放射能やダイオキシン汚染の心配も少ないとされています。また、魚を選ぶ際には「旬」を大切にすることも重要です。漢方医学の観点からも、旬の食材には「気」が充実しており、体調を整える効果が高いとされています。

第10回 魚

「魚だから無添加」は間違い。養殖魚は抗生物質・ホルマリン・TBTO汚染、冷凍魚は2-3年前の古い魚も。骨抜き魚の薬品処理問題と三陸沖天然魚がおすすめの理由を専門医が解説。

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